循環型システムでアパレル業界が変わる、キャラクターを通じて多くの人の関心を。
タキヒヨー株式会社 代表取締役 社長執行役員
滝 一夫
CASE STUDY 02
サステナブルやエシカルに興味を持つ人を増やし、業界を変えていく
身近なファッションを支え、人々のライフスタイルをおもしろく
テキスタイル(生地)から洋服まで、タキヒヨーは幅広いアパレル製品を街中の色々なお店に提供しています。繊維製品を通して、あなたの一番近くで、あなたのファッションを支えている企業です。数多くのライセンスを取得し、キャラクター製品の取り扱いもあります。ディズニー様とのライセンス契約は1985年から始まり、長期にわたってミッキーマウスをはじめとする、ディズニーキャラクターの商品を販売してきました。
創業から270年を超える現在、「Global Challenge ~変革と前進~」を掲げ、生産拠点の開拓やものづくり力の強化をはじめ、好調なテキスタイルに加えてアパレル製品の輸出も拡大することや国内でもシェアの拡大に取り組んでいます。 製品と生地を生業としている会社として、廃棄物の削減や資源の再利用を目的とする環境に配慮した商品の販売にも取り組み、例えば全国の「ファッションセンターしまむら」とオンラインストアでは、ミッキーマウスとミニーマウスのTシャツを展開し、話題になりました。
循環型システムが実現する、限りある資源の有効活用
タキヒヨーは、夢のあるおもしろい企業を創り、心の豊かな社会を目指すことを経営理念に掲げています。アパレルやテキスタイルにとどまらない幅広い分野に挑戦を続ける中で、サステナブルチームを大々的に立ち上げたのは2019年。ですが、実際に活動を始めたのはもっと前からです。リーディングカンパニーとして、これからの地球、限りある資源の有効活用について考え、実行をしています。
今までアパレル業界は大量に作り大量に捨ててきました。当社でサステナブルチームが立ち上がったきっかけは、生地の輸出に関してパリの見本市に出たことです。メゾンブランドから、どれがトレーサブルの効く商材か、リサイクル糸を使っているか、などの質問があり、それが商材を見る一つの要素になっていることを感じました。ほぼほとんどのブランドが、サステナブル、いわゆるエシカル、リサイクル、アップサイクルへ流れていき、業界は一変しました。これはブームではなく、加速して続いていくだろうと思っています。今、アパレル市場でのサステナブルへの関心は世界的に高く、海外のメゾンからリサイクルやサステナブルを考えた商品を求められていることも多々あり、社員の意識も変わってきたように感じています。
当社のサステナブルへの取り組みのひとつ、「THE NEW DENIM PROJECT」では、中米のグアテマラから届いた美しいサーキュラーエコノミー素材を活用した製品開発を行っています。これは、環境への影響が懸念されるアパレル産業を変えていきたいという思いから始まったアップサイクルプロジェクトです。デニムの裁断くず・落ち綿・古着など、これまで当たり前のように捨てられてしまっていたものを原料とし、素敵な糸・生地・製品へとアップサイクルしています。生地に生まれ変わらせる際には、水の使用量を可能な限り減らし、化学染料を使わない地球にやさしいものづくりをすすめています。また、紡績工場で最終的に出てしまう落ち綿は、提携のコーヒー農園に持ち込み、堆肥として還元。古着も生地や製品に再度生まれ変わらせ、地球の生態系そのもののような循環システムを構築しています。
また、循環システム「NO WASTE」は、アパレル製品を作る際にどうしても発生してしまう生地の裁断くずを粉砕して繊維に戻し、再紡績して糸や生地、商品に生まれ変わらせる「全て無駄にしない」をコンセプトに構築され、実際に「NO WASTE」のリサイクルコットンを100%使用した製品を販売しました。
生産コストがかかるリサイクル商品を消費者に選んでもらうという課題
リサイクル品は安いというイメージがつきやすく、それは自然なことであると考えていますが、実際には、循環型システムを構築することは容易ではなく、より製造までのコストがかかっています。
商習慣として、工場がブランドの洋服を作る際に裁断を行いますが、その際にゴミやくずが出て、そのゴミやくずについては工場が再販売するという流れがあります。そのため、ループを作る前に裁断物を購入する必要があります。
また、もう一つの課題が混率表示です。ポストコンシューマープロダクト(お客様のいらなくなった服をリサイクルすること)の際には繊維の種類がバラバラなどの理由で、新たに生まれた糸の中に何が入るのかがわからず、厳しい混率表示に対応することは難しいです。そこで、当社ではポストインダストリアルプロダクト(裁断くず回収)を行うことにしました。裁断くずから新しい糸を作りますが、それは通常の糸を作るよりも、新しい糸を作るコストがかかってしまいます。
よりコストがかかる中で、エコ商品を作り、エコやリサイクルの服をアピールすることで消費者は買ってくれるのか?という疑問があります。そのため、これからの社会では、消費者にはこれはエコなのか、と考えなくても、自然にエコな商品を選択できている状態にするのが理想だと考えており、当社では作る側の責任としてその仕組みを整えています。
キャラクターのブランド力と安心感が商品の価値を高める
キャラクターがいることで多くの人が関心を持つようになる
キャラクターのいない、リサイクル糸を作ったものでは注目をされない。そう考えて、今回はミッキーマウスとミニーマウスをデザインに取り入れて、付加価値を付けました。販売を行っているしまむら様には、サステナブルやエシカルがなにかを説明し、今回の商品の発売が決まりました。大きな会社だからこそ、この取り組みはインパクトがあった、いいきっかけになったと感じています。多くの人が手に取る商品であるからこそ、将来を見据えて、商品開発の提案をしました。
みんなが知っているディズニーだから得られる信頼性が魅力のひとつ
ミッキーマウスを知らない人はいないと思います。とにかく、知名度がすごく、見た瞬間にわかりますよね。キャラクターのデザインにおいて、それはすごくメリットだと思いました。
当社の経営哲学には、「信用第一」、「謙虚に」、「客六自四」というのがあり、ブランドは安心感だと考えています。信頼のあるキャラクターのいる安心感が、例えばエコ商品の販売時などにより多くの方の関心を集め、手に取っていただくことに役立つと考えています。
ディズニーとともにサステナブルを選択できる世界へ
親子でも着られる、低価格でありながらも環境に配慮した新商品
全国の「ファッションセンターしまむら」とオンラインストアで8月に販売開始されたこのアイテムは、廃棄物の削減や資源の再利用を目的とし、環境に配慮した新商品です。製造時の生地裁断時に出るくずを集め、糸に撚り直して作った当社の生地「REECOTTE」使用し、商品へのリサイクル綿の使用率は10%に。親子でも着られるように、ディズニーデザインのTシャツは、婦人、紳士、子供を取り揃えました。デザインは2つで、のワンポイント刺しゅう入りTシャツと、バックプリントTシャツを各979円で販売し、多くの方に手に取っていただいています。
キャラクターデザインにしたことで、手に取る人が増えたと実感
この取り組みは始まったばかりですが、8月の販売からの在庫回転は良いです。例えば親子でコーディネートができることや、ワンポイントでかわいいなど、デザインについてもポジティブな反応をいただけております。改めて、キャラクターのいない、リサイクル糸を作ったものでは注目をされにくく、付加価値を付けたことの反響を感じました。身近な会社や商品が、サステナブルに目を向けることのインパクトは大きいですし、今動かないと発展がなくなってしまうと考えているので、今後の展開も考えています。エコ商品は今度も販売を続けていきたいと思います。
パートナーシップを大切に、ブランディングを
タキヒヨーでは、環境を考えた小物、洋服、生地をつくっています。でも、これは点だと考えています。ディズニー様が考えるサステナブルと当社が考えるサステナブルは合致していると感じています。今回の取り組みだけでは、点でありブランディングにはならない。これをブランディングしていかなければならないと感じています。例えば、サステナブルを中心とした商品群をそろえるにあたり、別の企業様と一緒に取り組むことなど、範囲を広げていくことで大きい塊になり、実店舗でも面で展開できるようになります。
当社のノウハウとディズニー様の、例えばサステナブルを考えた商品だから使えるデザインなど、お互いの相乗効果を生むようなロードマップを作っていけたらと考えています。
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